「バタフライガーデン」という言葉をご存じですか。バタフライガーデンとはチョウがくる庭、チョウが主役の庭と言ってもいいかもしれません。美しい花だけでなく、花の周りをチョウが舞っていれば夢のように幸せな気分になるでしょう。チョウや昆虫を呼ぶことができる蜜源植物や食草とともに、バタフライガーデンのつくり方をご紹介します。

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バタフライガーデンとは

色とりどりの花咲く庭にひらひらと舞う蝶。菜の花にとまる可愛いモンシロチョウやモンキチョウ。思わず手を伸ばし、ゆくえを追っていると、木立の間からゆらりと漆黒のカラスアゲハが姿を見せる。甘い花の香りに誘われてとまったキアゲハが口吻を長く伸ばして花の蜜を吸う様子に見とれていれば、頭状から小鳥の声がふりそそぐ。

こんな光景を思い浮かべる方が多いかもしれません。何だか天国の庭のようですね。手が届かない存在に思えてしまうでしょうか?

バタフライガーデンは蝶や昆虫を呼ぶことができる蜜源植物や食草を植えて、チョウを誘い楽しむというコンセプトでつくられた庭です。美しい花だけでなく、花の周りをチョウが舞っていれば夢のように幸せな気分になるでしょう。

バタフライガーデン

イギリスのミリアム・ロスチャイルドが、野草でチョウを呼ぶ庭づくりをすすめる「The Butterfly Gardener」(1983年出版)という本の中で、バタフライガーデンという言葉を定着させたと言われています。

バタフライガーデンは地球の生物の営みが楽しく、また時には驚きと感動を持って味わうことができる場所なのです。

地上のあなたの庭でも、ベランダガーデンでもバタフライガーデンをつくることができます。バタフライガーデンはまず、チョウを呼ぶ花を植えることから始まります。どんな花がどんなチョウを呼ぶのか、これから詳しくご案内します。

バタフライガーデンのつくり方

スカビオサと蝶
スカビオサの花の蜜を吸うシジミチョウの仲間。

なぜチョウは花にやってくるのでしょうか?

それはもちろんチョウの食べ物の花蜜をもらうためです。チョウが花蜜をもらう時、花粉がチョウの足や触角につき、花は受粉を助けてもらいます。こうして花は種をつけ子孫を次代に残します。

花は受粉を助けるチョウやハチを呼ぶために蜜を出すのですが、品種改良が進んだ草花の中にはあまり蜜を出さないものがあります。ユリを例にとってみると、夏の野山に咲くヤマユリやオニユリ、コオニユリにはアゲハチョウがたくさん来ますが、ヤマユリを改良したカサブランカにはほとんどやってきません。園芸種は人間が交配して種を残すので、昆虫がやってきて受粉のお手伝いをする必要がないのです。ですから花が蜜を出さなくてもよくなりました。じつは、蜜を作り出すにはたくさんのエネルギーがいります。花にとっては重労働なので、必要がなければ楽なほうがいいですよね。

チョウが好きな花

バタフライガーデン
三尺バーベナやルドベキアの花の間を飛ぶクジャクチョウ。

チョウが好んでやってくるのは、改良が進んでいない草花や野山に自然に生える小さな草花です。

例えば野山の花としては、春のタンポポやハルジオン、夏のムシトリナデシコ、オカトラノオ、アザミ、秋のシオン、ノコンギク、フジバカマなど。

園芸種では、一年草のヒャクニチソウ、マリーゴールド、ブルーサルビアにはたくさんのチョウが来ます。宿根草ではルドベキア、エキナセア、宿根フロックス、シャスターデージー、三尺バーベナなどがチョウを呼ぶ花です。

小低木では、ブッドレアが特にチョウを呼ぶ花として有名です。英名で「バタフライブッシュ」と呼ばれるほど、チョウに好まれる花です。

ネムノキは大木になりますが、カラスアゲハなどの黒いアゲハチョウ類がやってきます。

オオムラサキ
オオムラサキ。JamesHou/Shutterstock.com

ちなみに花には来ないチョウもいます。日本の国蝶「オオムラサキ」です。オオムラサキはクヌギ、コナラ、クワなどの樹液を吸います。近くに雑木林があり、オオムラサキが棲んでいるなら、お酒をお皿に入れて置いておけば集まってくるそうです。

チョウが好む色

チョウはどのように花を識別して目的の花にたどり着くのでしょうか。

それは花の色と香りです。チョウによって好む花の色は異なりますが、多くのチョウに好まれるのは赤、赤紫、青、ピンク色です。しかし、モンシロチョウは赤を識別できません。モンシロチョウは黄色いタンポポや菜の花の蜜を吸いにきます。白や黄色を好むチョウもたくさんいます。

ですから、いろいろな色の花を植えるのがチョウに来てもらうためのコツです。

草丈

チョウは種類によって飛翔する高さが違います。シジミチョウ類は低いところ、アゲハチョウ類は比較的高いところを飛びます。高さの違う植物を植えると、いろいろな種類のチョウが来ます。また、高低差がある庭は立体感があり、庭にまとまりと調和が生まれます。

チョウが好む環境(日向か、日陰か)

ほとんどのチョウは日当たりのよい場所が好きです。一日5、6時間の日照時間があれば理想的ですが、それより少なくても大丈夫。チョウの中にはクロアゲハやジャノメチョウなど日陰の好きなチョウもいます。羽を休める木陰も必要です。

日当たりのよい場所と緑陰をバランスよく配置しましょう。

農薬

いうまでもありませんが、バタフライガーデンでは農薬の使用は控えましょう。強健で病害虫に強い植物もたくさん開発されています。そういう植物を選べば、管理も楽で気分よくガーデンライフを過ごせるでしょう。

バタフライガーデンに植えたい植物20

バタフライガーデン
ヒャクニチソウに飛び交うさまざまなチョウたち。Georgi Baird/Shutterstock.com

このリストを参考に、あなたの庭に最適な花を植えましょう。春から秋までチョウを呼ぶ花が絶えず咲いているようできれば最高です。

花の名前 種類 花期 訪花が期待される蝶
スイートアリッサム 一年草 3〜6月
ナノハナ・ムラサキハナナ 一年草 4〜5月 モンシロチョウ
シャスターデージー 宿根草 5〜7月 モンキチョウ
ムシトリナデシコ 宿根草 6〜8月 モンシロチョウ
エキナセア 宿根草 6〜9月 ヒョウモンチョウ
マリーゴールド 一年草 5〜10月 セセリチョウ
ヒャクニチソウ 一年草 6〜10月 アゲハチョウ
フロックス 宿根草 6〜10月 キアゲハ
ブルーサルビア 一年草 6〜10月
二コチアナ 一年草 6〜9月
アザミ 宿根草 7〜8月
モナルダ 宿根草 7〜8月 アゲハチョウ
ヤマユリ・オニユリ 宿根草 7〜8月 キアゲハ
ルドベキア 宿根草 6〜10月 ベニシジミ
ランタナ 宿根草 6〜12月
三尺バーベナ 宿根草 6〜9月 キアゲハ・トラシジミ
フジバカマ 宿根草 9〜10月 アサギマダラ
ブッドレア 灌木 6〜9月 カラスアゲハ
ツツジ 灌木 5〜7月 アゲハチョウ
ユキヤナギ 灌木 3〜4月 ルリシジミ

訪花が期待されるチョウの名前は参考程度に。訪花したチョウの姿を写真に撮って記録しておくと楽しいです。

勝手に生えてくる野草、雑草の仲間で、タンポポ、ハルジオン、カタバミ、レンゲ、クロバーなどには、じつはチョウが多く訪花します。あまり邪魔にならなければ、抜き取る手を休めてみませんか。また、庭に余裕があれば野草コーナーをつくっておくのもいいですね。

ガーデナーの敵、憎っくき雑草「ヤブガラシ」の花は昆虫たちにとっては素敵なレストラン。ハエからミツバチ、スズメバチとたくさんの昆虫を呼びますが、アオスジアゲハはヤブガラシが大好きでよく訪花します。樹木に巻きつかないように工夫して、垣根やフェンスに伸ばしておければいいですね。

食草

レモン
アゲハの幼虫の食草となるレモン。Cristina Elena Florea/Shutterstock.com

チョウの子供である幼虫が食べる植物を食草と言って、チョウごとに決まっていています。お母さんであるチョウは必ず食草に産卵します。ですから食草を植え付けておけば、チョウが出現する確率はグッと高くなるわけです。

アゲハの幼虫の食草はミカンなどの柑橘類、キアゲハの幼虫はセリ科の植物を食べます。

ナミアゲハやクロアゲハが幼虫からサナギになり羽化するところまで観察したい方には、食草の山椒やレモン、ユズを植えることをお勧めします。

絶対に幼虫は見るのも嫌! という方は食草になる植物を注意深く避けましょう。

おすすめのモデルプラン

ベランダガーデン

5、6階くらいまでのマンションのベランダガーデンにもチョウはやってきます。

低木のブッドレアを一本用意すれば、いろいろなチョウの訪花が見込めます。また、大きめのプランターにヒャクニチソウ 、マリーゴールド 、ブルーサルビアなどを植え込んでおきましょう。アゲハの食草であるレモン、山椒の鉢を準備すればより確実にチョウを呼ぶことができます。さらに果実を料理に使えるので一石二鳥です。

小さな庭

バタフライガーデン
キャットミントの蜜を吸うクロスジシロチョウ。

ブッドレア、ツツジ、ユキヤナギなどの灌木を地植えにします。シャスターデージー 、フロックス、モナルダ、三尺バーベナ、ランタナ、キャットミントなどの宿根草と、ムラサキハナナ、マリーゴールド 、ヒャクニチソウ 、ブルーサルビアなどの一年草を組み合わせると手入れが簡単になります。花の色は多彩なほうがいいですが、まとまりがなくなりがちなので、気をつけましょう。中心になる色を決め、その色と反対の色、また同系色をバランスよく配置するといいでしょう。

大きな庭

フジバカマとアサギマダラ
フジバカマに飛来するアサギマダラ。tagu/Shutterstock.com

コナラやネムノキを植えて雑木林風のコーナーをつくると、樹液が目的のチョウがやってきます。クローバーやレンゲの種を播き、草原をつくってモンシロチョウやシジミチョウを呼び寄せましょう。タンポポやハルジオンにもたくさんチョウが来ますので、そのまま抜かずにおきます。

チョウが好きな園芸種も野生種も組み合わせて、春から秋まで花の絶えない庭をつくれば、いつでもチョウの飛ぶ姿を見ることができます。

フジバカマをたくさん植えて、アサギマダラの飛翔を待つのも素敵です。海を渡るチョウとして名高いアサギマダラが、南の国への旅の途中で寄ってくれるかもしれません。

バタフライガーデン

チョウが来る庭、バタフライガーデンのつくり方がご理解いただけたでしょうか。

まず、ヒャクニチソウ とブッドレアを植えましょう。

そしてプランターにいつの間にか生えたカタバミを抜かずに放っておきましょう。

通路に咲いたタンポポも。

1匹、2匹、3匹とチョウがやってきたら大成功。あなたとチョウの付き合いの第一歩です。

あっ、チョウは「匹(ひき・ぴき)」ではなく、「頭(とう)」と数えるのが正しいのです。

なぜか? 諸説あって理由は分かりません。

Credit

文・写真(記載外)/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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